妊娠編

妊娠4ヵ月/妊娠中の食生活

赤ちゃんの成長のためにはお母さまの食事内容がとても大切になります。
栄養の必要性
  • 赤ちゃんの発育に必要な栄養は、すべて胎盤を通して母体からあたえられます。
  • 胎盤、卵膜、さい帯、羊水の形成にも多くの栄養を必要とします。
  • 子宮の発育、乳腺の発育、血液の増加にも栄養が必要です。
  • 出産時や産褥期の体力の消耗にもそなえなければなりません。
おなかの赤ちゃんを育むために体重が増えることは自然であり、またとても重要なことなのです。
ただ、必要以上の体重増加は、妊娠高血圧症候群や難産につながったり、反対に、「産後の肥満がいや」と必要な栄養までとらないのも問題です。赤ちゃんの順調な発育のためにも、妊娠中はより多くの、良質な栄養をとるようにしましょう。必要な栄養を十分にとり、適切な範囲で体重を上手にコントロールすることが大切です。間違った食習慣はこの機会に見直しましょう。正しい食生活は、将来の生活習慣病や骨粗しょう症を予防し、お子さまやご家族の健康管理にも役立つはずです。
1日3食バランスのよい食事を
朝食をぬいたり、夕食にかたよることなく、食事は1日3回規則的に、適量を食べましょう。「主食」を中心に「副菜」、「主菜」、汁物を組み合わせると自然に栄養のバランスもよくなります。
表のイラストの料理例を組み合わせると、おおよそ2200kcal。非妊娠時・妊娠前期(20~49歳女性) の身体活動レベル「ふつう(Ⅱ)」以上の人の1日分の適量を示しています。
妊産婦のための食事バランスガイド
1日に「何を」「どれだけ」食べたらよいかがひと目でわかる食事の目安です。「主食」、「副菜」、「主菜」、「牛乳・乳製品」、「果物」の5グループの料理や食品を組み合わせてとれるよう、コマにたとえてそれぞれの適量をイラストで示しています。
コマを回す4つのポイント
  • 適量でバランスのよい食事
  • 十分な水分
  • 菓子や嗜好飲料は楽しく適度に
  • 適切な運動
このコマは、厚生労働省・農林水産省が決定した『食事バランスガイド』 に基づき、(株)ブレーンワーカーHOTが作成したものです。
コマのイラストの一番上から、主食(ご飯・パン・麺)、副菜(野菜・きのこ・芋・海藻料理)、主菜(肉・魚・卵・大豆料理)、牛乳・乳製品、果物の順になっています。コマのバランスがくずれないように食品のとり方を工夫しましょう。量の単位は、日常的な料理の量を目安とした単位「つ(SV)」になっています。たとえばご飯軽く1杯を「1つ(SV)」と数えます。
※SVとはサービング(食事提供量)の略です。
「主食」を中心に、エネルギーをしっかりとりましょう。
不足しがちなビタミン・ミネラルを「副菜」でたっぷりと。
からだづくりの基礎となる「主菜」は適量を。
「牛乳・乳製品」などの多様な食品を組み合わせて、カルシウムを十分に。
規則正しい食事のため
不規則な食事は食べすぎや偏食につながります。また、朝食、昼食をしっかり食べることで甘いお菓子の間食や、夕食の食べすぎも防げます。
  • 外食の場合は、野菜が入り品数も多い定食を選びましょう。コンビニランチならサラダや野菜ジュース、果物などをプラスして。
  • 夕食は、できれば夜7~8時までに済ませましょう。おなかがすいたときはりんごなど果物を。帰宅の遅いご主人に付き合って夜食を食べないよう気をつけて。
  • おやつ(間食)は乳製品や果物がおすすめです。ただし果物の食べすぎは要注意です。清涼飲料水やスナック菓子はできるだけひかえましょう。
  • 出産時や産褥期の体力の消耗にもそなえなければなりません。
妊娠中の体重増加は自然なこと
妊娠中の体重増加は、大きくなっていく赤ちゃんや胎盤の重量、羊水、子宮や乳房の分、さらに血液の増加、出産と授乳にそなえる母体の皮下脂肪分などとても自然なことです。
やせすぎ・太りすぎに注意して
妊娠前の不適切な食生活により過度の「やせ」になると、月経不順や体調不良、骨量の減少などを招きやすくなります。また、妊娠中に適切に体重が増えない場合には、妊婦の貧血、切迫早産、胎児の発育遅延や低出生体重児の出産などの可能性が高くなります。妊娠前から太りすぎだった人も、妊娠高血圧症候群や妊娠糖尿病の他、分娩時の異常などを起こす可能性が高くなります。妊娠前から健康なからだをつくることが大切ですし、妊娠中も、元気な赤ちゃんを出産するために、体重増加を適正にコントロールすることが大変重要です。
  • 妊娠高血圧症候群は、分娩時出血が多くなる、貧血・疲労につながる、母乳が出にくくなる、赤ちゃんに栄養がいかない、低出生体重児の出産、早産などにつながりかねません。
  • 糖尿病は、赤ちゃんが育ちすぎて頭が産道を通りにくい、分娩が長引く、帝王切開になるなどが心配されます。
貧血予防のために
おなかの赤ちゃんの発育に欠かせない鉄分もすべて母体からあたえられます。妊婦さまは、血液量の増加や赤ちゃんへの供給などから、1日に妊娠初期は約9mg、妊娠中期・後期は約15mgの鉄分が必要になります。
ヘモグロビンは鉄とたんぱく質からつくられます。鉄は赤身の魚や肉に多く含まれるヘム鉄がからだによく吸収され、植物性たんぱく食品に多く含まれる非ヘム鉄も、動物性たんぱく質・ビタミンCと一緒にとると吸収率が上がります。鉄分補助食品も食間ではなく食後にとるといいでしょう。この他、造血作用のあるビタミンB12、葉酸、ビタミンB6、銅を多く含む食品をとるのも、貧血予防に効果的です。
塩分は1日6.5g未満に
塩分のとりすぎは、むくみや血圧上昇などの原因になります。妊娠中に限らずふだんからひかえめに。次のような方法で1日の食塩摂取量をおさえましょう。自然の味を活かし薄味を心がけましょう。
  • 炊き込みご飯、すし飯など塩味のついている主食は1日1回までにする。
  • ラーメンやうどんの汁を残す。
  • 塩分の多い食品(塩鮭・たらこ・佃煮・漬物など)は食べない。
  • ハム・ベーコン・プロセスチーズ・ちくわ・はんぺん・かまぼこ・ 干物など、肉・魚・乳製品の加工品はひかえめにする。
  • 食品添加物や化学調味料の入った食品を使用しない。だしはできるだけ天然のものを。
  • 砂糖やみりんをひかえ、食材の自然の味を活かし薄味を心がける。
  • 刺身や餃子などの付け醤油はひかえめに。
* ワンポイントアドバイス
油をひかえるコツ
  • 食材はエネルギーの少ないものを選びます。肉は脂肪の少ない、豚肉・牛肉ならももなどの赤身、鶏肉ならささみか皮を除きましょう。魚はいろいろな種類をかたよらずに食べましょう。
  • 茹でる、蒸す、網で焼く、ホイルに包んで焼くなど、油を使わない調理法を工夫しましょう。炒めものはテフロン加工のフライパンを利用。揚げものは週1~2回にとどめます。
  • ドレッシングはノンオイルタイプ、マヨネーズはひかえめに。レモン、果実酢、二杯酢、ゴマ、シソ、大根おろし、ハーブ類、香辛料などを活用しましょう。
カルシウムをしっかり
食生活の豊かな時代でも不足しがちなのがカルシウム。将来の骨粗しょう症予防のためにも、今からしっかり目安量をとりましょう。1日の推奨量は、非妊娠時・妊娠時・授乳中いつでも650mgです。カルシウムを多く含む食品は、乳製品(牛乳・無糖ヨーグルト・チーズ)、納豆などの大豆製品、小魚、しらす干しなど。
鉄分を多く含む食品
マグロ・カツオ・カキ・アサリ・シジミ・豆腐・納豆・大豆・ほうれん草・小松菜・豚レバーなど
葉酸を多く含む食品
緑黄色野菜・枝豆・ナッツなど
ビタミンB12を多く含む食品
貝・魚など
食物繊維を多く含む食品
豆や大豆製品・芋類・根菜類・緑黄色野菜・干柿・果物・切り干し大根・きな粉・おからなど